Love the life you live, Live the life you love ☆マルハビスピリット☆

信州松本で、築50年の古家つき土地を購入してセルフリノベ中☆方法もわからない、やることいっぱい、まったく進まない、、、でも自分でやるって楽しいな♪

築50年について改めて思いを馳せる日

お向かいの土壁漆喰塗の納屋が壊されました。
この家と同じ年代の、築50年になる建物です。

建築業を営んでいたお向かいさんの家の、作業小屋として長年活躍した納屋です。
さすが元建築業だけに、その造りはとても立派で、材料もいいものが使われていました。

明日壊してしまうから、いるものがあればもっていいっていいよ、と言われ、昔の鉄釘や棚受け、
それに道具箱などを、何に使うのやらわかりませんが、もったいないので少し譲って頂きました。(我が家は断捨離、という概念からは程遠いです…)

納屋を拝見して特に素敵だったのは床板です。今なら「アンティーク足場板」なんていう名前でいいお値段で売られていそうな代物。
しかし、なんだかがめつようで、ご迷惑なようで、「床板はがしていいですか」とまで言うことができずにいました。

そして迎えた倒壊(”解体”ではなく、”倒壊”でした)の朝。隙あらば古材や床板をもらえないだろうか、と覗き見ていましたが、
巨大なユンボがズイっとやってきて、ほんの小一時間で何もかも壊し、数時間で材料をすべて運んで更地にしてしまったのです。


昨日まであんなに素敵だった築50年の漆喰壁の納屋。以前だったら、きっとこんな風な壊し方はせずに、
順番に壊して使える材料は古材としてまた使ったと思うのですが、今はこんな風に何もかも一色胆に、上からぐちゃっとユンボつぶしてしまうのですね。今まで通りがかりに見た作業現場の中でも、ダントツであっという間だった気がします。(最初から終わりまで見ていた現場は無いですが、少なくとも2日はかかっていた気がします)
板や古材をもらえそうな隙なんて全然ありませんでした。

どうして昨日、遠慮してしまったのか、自分たちの手で救って、息を吹き返すことができる素材が目の前にあったのに!!
と、とても後悔しました。

私はもう悲しくて悲しくて、めりめりと壊されていく建物を見ながら何故か涙が止まりませんでした。
ユンボの先で転がされ砕かれている立派な梁を見て、胸がつぶれる思いです。
あの立派な、大工さんが鉋で一本ずつ削り出した柱や梁が、もう一瞬で、ただのゴミと化してしまったのです。

なぜ、この頃に作られた素材が、こんなに自分にとって貴重で魅力的に思えていたのか、その時ふとわかりました。
この築50年のおうちは、大工さんが手で、カンナとノミで削って作ったおうちなのですね。切る作業もきっとのこぎりだった時代です。
おじいちゃんの世代の人たちが、機械ではなく手作業で造った家。

そんなの当たり前、と言われればそうなのですが、今更ながらそのことにハタと思い至り、
そうか、そんな芯から手作りの家に住むことができる、ラストチャンスを自分は拾ったんだ、と、気づきました。

もし今、たとえ総無垢作りの家を作ったとしても、カンナがけはプレーナーという機械を使うでしょうし、切るのも電ノコ、
掻き込むのもトリマーです。

もちろんイチ主婦の私だって、今時かまどでご飯を炊くわけでなければ、洗濯板で洗濯するわけではありません。
だから、それがイイとかワルイではありません。


ただ、なんだかこの家に巡り合えて、この家を再生して住むという決断をした自分を褒めたいような、そんな衝動に駆られた一日でした。今壊してしまったら、もう二度と住むことができない種類の住宅、それが築50年物件、ということを、改めて感じました。